■不服
■もの
主文
1 原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。2 上告人と被上告人らとの間において,上告人が別紙
供託目録記載の各供託金について還付請求権を有す
ることを確認する。
3 訴訟の総費用は,被上告人らの負担とする。
理由
上告代理人片岡義広,同小林明彦,同小宮山澄枝,同内山義隆,同関高浩,同稲葉譲の上告受理申立て理由について1 原審が適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 株式会社D(以下「D」という。)は,上告人との間で,平成9年3月31日,株式会社E(以下「E」という。)が上告人に対して負担する一切の債務の担保として,次の内容の債権(以下「本件目的債権」という。)を上告人に譲渡する旨の債権譲渡担保設定契約(以下「本件契約」という。)を締結した。
ア 債権者 D
イ 債務者 株式会社F(以下「F」という。)
ウ 債権 債権者が債務者との間の継続的取引契約に基づき,(ア) 平成9年3月31日現在有する商品売掛代金債権及び商品販売受託手数料債権,(イ)同日から1年の間に取得する商品売掛代金債権及び商品販売受託手数料債権
(2) 本件契約においては,約定の担保権実行の事由が生じたことに基づき,上告人が第三債務者であるFに対し譲渡担保権実行の通知をするまでは,Dが,その計算においてFから本件目的債権の弁済を受けることができるものとされている。
(3) Dは,Fに対し,平成9年6月4日,確定日付のある内容証明郵便をもって,債権譲渡担保設定通知(以下「本件通知」という。)をし,同通知は同月5日にFに到達した。
同通知には,要旨,「Dは,同社がFに対して有する本件目的債権につき,上告人を権利者とする譲渡担保権を設定したので,民法467条に基づいて通知する。
上告人からFに対して譲渡担保権実行通知(書面又は口頭による。)がされた場合には,この債権に対する弁済を上告人にされたい。」旨の記載がされていた。
(4) 平成10年3月25日,Dが手形不渡りを出したことにより,Eは上告人に対する債務の期限の利益を喪失し,本件契約において定める担保権実行の事由が発生した。
上告人は,Fに対し,同月31日,書面をもって本件譲渡担保設定契約について譲渡担保権実行の通知をした。
同書面に確定日付はない。
(5) 被上告人国は,平成10年4月3日付け及び同月6日付けの差押通知書をFに送達して,同年3月11日から同月20日まで及び同月21日から同月30日までの商品売掛代金債権及び商品販売受託手数料債権(以下「本件債権」という。)について,Dに対する滞納処分による差押えをした。
(6) Fは,平成10年5月26日,本件債権について,債権者を確知することができないことを理由に,別紙供託目録記載のとおり,被供託者をD又は上告人とする供託をした。
(7) Dは,平成10年6月25日,破産宣告を受け,被上告人Bはその破産管財人である。
2 本件は,上告人が,被上告人らに対し,本件債権の債権者であると主張して,上告人が別紙供託目録記載の弁済供託金の還付請求権を有することの確認を求めている事件である。
原審は,次のとおり判示して,上告人の本件請求を棄却すべきものとした。
(1) 本件通知には,DがFに対する債権につき上告人のために譲渡担保権を設定したとの記載があるが,これに続けて,上告人からの別途の通知があった場合には上告人に弁済することを求めるとの記載もあるから,本件通知は,将来の別途の通知があるまでは,FはDに弁済すれば足りることを意味し,それまでの間は,担保権の目的物を消滅させることが認められている。
したがって,当面は担保権設定による制約を受けない旨通知されていることになる。
また,本件通知では,別途の通知があるまでは,債務者Fが担保権設定者である当初の債権者Dに対する反対債権をもって,譲渡担保権が設定された債務と相殺することも容認しているものと考えられる。
このことは,当初の債権者(D)の債務者に対する債権の帰属に変化はなく,あくまでも担保権設定者であるDが債権者であることを意味するものである。
そうすると,本件通知は,担保権者である上告人に債権が移転したことを通知したものと認めることはできず,債務者が同通知により債権の帰属に変動が生じたと認識することを期待することはできない。
したがって,本件通知には,第三者対抗要件としての通知の効力を認めることはできない。
(2) 本件契約が,将来,約定の担保権実行の事由が発生し,上告人がFに担保権実行の通知をした時点で,上告人に債権が移転するという内容であったとしても,本件通知をその対抗要件であると認めることはできない。
本件通知を受けた時点では,担保権実行の事由が発生するか不明であり,実行の通知の有無,時期について全く不確定であるから,このような不確実な将来の事由が生じたら債権譲渡の効力を発生させるということを通知するにすぎない本件通知をもって,第三者に対する対抗要件としての通知の効力を認めることはできない。
3 しかしながら,原審の上記(1)の判断は是認することができない。
その理由は,次のとおりである。
(1) 甲が乙に対する金銭債務の担保として,発生原因となる取引の種類,発生期間等で特定される甲の丙に対する既に生じ,又は将来生ずべき債権を一括して乙に譲渡することとし,乙が丙に対し担保権実行として取立ての通知をするまでは,譲渡債権の取立てを甲に許諾し,甲が取り立てた金銭について乙への引渡しを要しないこととした甲,乙間の債権譲渡契約は,いわゆる集合債権を対象とした譲渡担保契約といわれるものの1つと解される。
この場合は,既に生じ,又は将来生ずべき債権は,甲から乙に確定的に譲渡されており,ただ,甲,乙間において,乙に帰属した債権の一部について,甲に取立権限を付与し,取り立てた金銭の乙への引渡しを要しないとの合意が付加されているものと解すべきである。
したがって,【要旨】上記債権譲渡について第三者対抗要件を具備するためには,指名債権譲渡の対抗要件(民法467条2項)の方法によることができるのであり,その際に,丙に対し,甲に付与された取立権限の行使への協力を依頼したとしても,第三者対抗要件の効果を妨げるものではない。
(2) 原審の確定した前記事実関係によれば,本件契約は,Dが,Eの上告人に対する債務の担保として,上告人に対し,Fとの間の継続的取引契約に基づく本件目的債権を一括して確定的に譲渡する旨の契約であり,譲渡の対象となる債権の特定に欠けるところはない。
そして,本件通知中の「Dは,同社がFに対して有する本件目的債権につき,上告人を権利者とする譲渡担保権を設定したので,民法467条に基づいて通知する。」旨の記載は,DがFに対し,担保として本件目的債権を上告人に譲渡したことをいうものであることが明らかであり,本件目的債権譲渡の第三者対抗要件としての通知の記載として欠けるところはないというべきである。
本件通知には,上記記載に加えて,「上告人からFに対して譲渡担保権実行通知(書面又は口頭による。)がされた場合には,この債権に対する弁済を上告人にされたい。」旨の記載があるが,この記載は,上告人が,自己に属する債権についてDに取立権限を付与したことから,Fに対し,別途の通知がされるまではDに支払うよう依頼するとの趣旨を包含するものと解すべきであって,この記載があることによって,債権が上告人に移転した旨の通知と認めることができないとすることは失当である。
4 そうすると,本件通知に債権譲渡の第三者対抗要件としての通知の効力を否定して上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
この点をいう論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。
そして,以上説示したところによれば,上告人の本件請求は理由があることが明らかであるから,本件請求を棄却した第1審判決を取り消し,これを認容すべきである。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
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